坂口安吾『堕落論』(新潮社文庫刊)

 最初に手にしたのは、いわゆる「お年頃」の我ながら面倒臭いヤツだった時代だ。とにかく何でも小難しく考え、本屋でもなるべく難解そうなものを手に取り、わかったような気になりながら読み漁っていた頃に、この本に出会ったのだと記憶する。

 人は生き、人は堕ちる。

 正直、これしか覚えてない。初めて読んでから、何度か読み返しているはずなのに、ここしか覚えていないのだ。そして、これを覚えているだけで、この本のすべてをわかっている気になっている。・・・今も。ちなみに小生が所有するこの本は、それなりにくたびれている。覚えてないのにも関わらず、だ。

 心の洗濯を気取ってひとり旅に出る際は必ずこの本を鞄に入れる。異国の地で、昼間からビールを呑みながら読む『堕落論』ほど面白いものはない、と思う。「そうだよ、人間は堕ちるんだよ」と。

 ただ、内容は覚えていない。そんな読み方があってもよいではないか!と、思う今日この頃である。

 ・・・アルコールが入っていない時、今一度読み返してみようと思います。

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