谷崎潤一郎『痴人の愛』(新潮社文庫刊)

 ひたすら気持ち悪かった。

 ある意味で印象深すぎる作品である。

 そもそも「ナオミ」の魅力がわからない。大の大人が振り回されているのもわからない。さらに、それを喜んでいるのが気持ち悪い。

 何度も投げ出しそうになりながら、それでもこの男はどうなっていくんだと読み進めることができた。最後の10頁くらいは、比喩でなく、大げさでなく声に出して「気持ちが悪い」と言いながら読んだことを覚えている。

 

 何度も言う。

 ひたすら気持ちが悪い。

 その感想は変わらないが、ただやはり谷崎潤一郎は凄いと思う。こんなに生々しく、心底気持ち悪いと思わせる作品が生み出せるのだ。その筆力は圧倒的だと、小生は思う。良い意味で本物の変態なのではないか、と。薄っぺらい上辺だけの言葉では、ここまで人の感情を(というか小生であるが)動かせるわけがない。そう、小生は考察するのである。谷崎潤一郎、恐るべしである。

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